東京都は、国に対して、「エネルギー政策策定に対する都の提案」をまとめ、公表した。国が8月にエネルギー政策を取りまとめるにあたり、「エネルギー・環境に関する選択肢」「原発依存度を低減する場合」など8点の課題について、国に対応を強く求めた。
都は、エネルギー政策策定の作業を行うにあたっては、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故や、その後の計画停電などで露呈した電力供給体制の脆弱さに対する反省から始めなければならないとしている。これらの踏まえ、最優先の課題は、規制改革を行い、電気事業に競争原理を導入し、民間事業者の参入促進により、電力供給の安定と消費者の選択肢を増やして、電気を安心して使用できる環境を構築することを前提とすべきであると指摘する。「エネルギーの選択は、将来の国のありようを左右する重大な決断であり、将来に禍根を残さないためにも」として対応を求めた、8点の課題は以下の通り。
【1】
「エネルギー・環境に関する選択肢(平成24年6月29日エネルギー・環境会議決定)」での3つのシナリオについて、電源構成の積み上げ根拠など具体的な数値が示されていない。今後の原発のあり方や、火力・水力・太陽光発電等の再生可能エネルギーの整備計画など、総合的なエネルギー政策の全貌を明確に示すこと。
【2】
原発依存度を低減する場合には、原発停止時期や廃炉の順位など今後のビジョンを示すと共に、計画的な原子炉の廃炉に向けた技術の確立と、高線量の下でも稼動が可能なロボット技術の開発など、我が国の技術力を結集して取り組むこと。また、それを担う人材の育成を図ること。
【3】
東電の火力発電所の約4割が運転開始から35年を経過している現状を踏まえ、故障による電力供給のリスクを払拭するためにも、火力発電所リプレース計画を早急に具体化するとともに、その計画を災害対策基本法の特例措置の対象とすること。なお、既存の発電所の同一敷地内において、既存設備よりも高効率な機器にリプレースをする場合には、アセスの手続を簡素化するなど、短期間にリプレースが実現できるようにすること。
【4】
原油価格連動のため上昇傾向にある我が国天然ガス価格は、シェールガスの増産等により低下傾向である北米と比べ数倍程度のコスト高となっているが、一方で「総括原価主義」等により安価な燃料調達に取り組むインセンティブが働きにくい体質があったことも否めない。国としても燃料調達への関与を一層強め、輸入燃料価格の引き下げに向けて戦略的な取組を強化すること。
【5】
電力供給の多様化を進めて競争を促し、需要家の選択肢が広がるよう、部分供給の推進や託送料金・インバランス料金の更なる見直し等、電気事業への民間事業者の参入促進を図り、電力制度改革を推進することで、地域独占の弊害による高コスト構造を改革すること。特に、新電力の育成を進め、シェア30%程度を目指した政策展開をおこなうこと。
【6】
既存の発電設備を効果的・効率的に活用するため、地域間を越えた機動的な電力の全国融通を促進するなど九電力会社間の系統を包括的に運用するとともに、周波数変換装置や地域間連系線の増強を図るよう指導すること。
【7】
複数の電力会社の系統を包括的に運用する方法などにより、東北・北海道地域での供給ポテンシャルの高い再生可能エネルギーの大量導入を図ること。
一方で、電力会社が風力発電の大量導入には、系統対策に多額のコストを要するなどとの見解を出しているが、客観的な視点で徹底的な検証を行うこと。
【8】
エネルギー環境政策を推進するにあたっては、供給面の取組だけでなく、需要面の対策である省エネ・節電対策を進めることも極めて重要である。省エネ・節電対策については、震災後の現状を分析し、抜本的強化を図ること。